<J1:札幌2-1大宮>◇10日◇NACK

 エースの一発が窮地を救った。コンサドーレ札幌がアウェーで大宮を2-1で下し、6試合ぶりに白星を手に入れた。同点で迎えた後半40分、左CKからFWダビ(24)が決勝点となるヘディングシュートを決めた。4月26日のホーム新潟戦で乱暴行為を犯し、一発退場。2試合出場停止となったエースを欠いたこともありチームは失速、新潟戦から4連敗を喫していた。大黒柱の「おわび弾」で奪った勝ち点3で、苦しんだトンネルからやっと抜け出した。

 誰もが引き分けを意識し始めた後半40分、ダビがゴールに突進した。クライトンからの左CKをニアからすらす。ファーサイドの柴田がスライディングしながら必死で折り返したボールは、もう1度ダビに戻ってきた。「相手DFをずらしてゴール前に残っていたら、うまくいったよ」。頭で押し込むと体中に喜びがあふれた。

 静寂に包まれるアウェーのスタジアムで、クライトンらと次々に抱き合った。前半は完全な札幌ペース。だが、後半に入ってからは守勢にまわり、後半24分には1-1に追い付かれていた。そんな嫌な流れを断ち切る、値千金の決勝ゴールだった。

 試合前日から気合が入っていた。「チームのために勝つ。そのためにゴールを決める」。そう公言していた通り、この日はチーム戦術に不慣れな初先発のFW宮沢をフォローするように、精力的に走りまわった。相手ボールを必死に追い込み、プレスをかけ続ける。「立ち上がりから集中できた」という気迫が、最後まで衰えない運動量を支えていた。三浦監督も「(FWら)前の選手が非常にアグレッシブだった」とたたえた。

 4月26日の新潟戦の前半34分、相手DFに頭突きし、退場となった。2試合の出場停止。エースを欠き、リズムを崩したチームは、新潟戦から4連敗とどん底にあえいでいた。「自分のせい」。ダビも悩んだ。落ち込み、寝付きが悪くなってもおかしくない状況だったが、積極的に休息を心がけた。「コンディションを整えることが、今の自分でできる最大のおわびだから」。練習後は「ベッカムカプセル」と呼ばれる高圧酸素カプセルに入った。横になりながら手にしていたものがある。日本語の教本だった。

 「みんなともっとコミュニケーションを取りたいんだ」。昨年はカウエやブルーノ・クアドロスら、自分よりも日本語ができるブラジル人選手がいた。だが、ただ1人残った今年は、より連係を図るため言葉をマスターしようという自覚があった。今ではラーメンの微妙な注文もできる。ピッチでは「こっちだっていってるしょ」と北海道弁で指示を出す。そうやって大切にしてきたチームが自分の犯した軽率な行為で崩れたことに、苦しんでいた。「本当の謝罪はゴールすること」。この日、その思いをやっと形にできた。

 次節17日の名古屋戦(札幌ドーム)を最後に、リーグはW杯予選の中断期間に入る。ホームで迎える節目だけに、負けられない試合になる。「意識しなければいけない大事な一戦。しっかりとした準備をする」。背負っていた重圧から少しだけ解放されたエースは、ふっきれたような表情をみせた。【上野耕太郎】