コートジボアール戦から、大幅にメンバーを変えて挑んだパラグアイ戦。フォーメーションも4−5−1という1トップの布陣だ。

 「前半の25分間は、本当に自分たちのサッカーができなかった。日本がこの時間帯を生かしていれば、おそらくゴールを決めているような局面もあったのではないか」とパラグアイ代表のマルティノ監督が語ったように、試合開始直後には、横パスを何本か繋ぎ、裏へ抜けてという形でのチャンスを作ることができた。

 しかし、1トップの巻誠一郎へのサポートも少なく、次第に得点チャンスの機会も減っていく。それでも前半は、中盤でのポゼッションを高めることができた。だが、パスを回しているだけでは、得点は生まれない。「前には巻しかいなかったので、ロングボールを入れるのは得策ではないというのはあった」と遠藤保仁は振り返る。

 この試合で岡田ジャパン初先発となった中村俊輔は、「ボールは回っていたけど、3人目の動きが足りなかった。前半はある程度形を作れてはいたけれど、後半は、個人個人が自分のプレーに走りすぎたところがあったと思う。ペナルティーエリア付近でそういうプレーが出れば、効果的だけど、今日はもっと後ろから自分勝手なプレーをしてしまい、ボールをとられてしまっていた」と無得点に終わったチームを分析した。

 コートジボアール戦同様に、守備面ではどの選手も満足を得ているようだったが、攻撃面での課題は、コートジボアール戦同様に残されたままだ。「守備に関してはポジショニングもいいし良かった。まずは守備から作っているので、攻撃はこれからやると思いますし、やれると思います」と中村憲剛。山瀬も「攻撃に関してはね…。こればっかりは練習を繰り返すしかない」と今後に改善の余地が必要だと話している。

 岡田監督は「とにかくしっかりしたチームベースを作るということで、ある程度手ごたえを感じている」とキリンカップの目的が達成された話す。そして、「今日のメンバーだとこういう展開になる危険性はあるだろうと。ただ一度やってみなくてはわからないということでトライしてみた。その中で見えてきたこともあったので、自分としてはよかった」とも話している。

 コートジボアール戦での大久保や玉田のような運動量とコンビネーションで相手ディフェンスをこじ開けるという部分において、パラグアイ戦は物足りなさがあった。1トップだったこともその要因だろう。ただ、それもアウェーでの苦しい時間帯にパスを繋ぎ、相手を疲れさせるというシュミレーションと考えられなくはない。

 後半、立て続けに松井大輔、大久保嘉人を投入し、活性化を図ったが、いまひとつ効果が発揮できなかったのも事実だ。

 「試合全体としては、最後のところで長い距離を走らないといけなかった」と中村憲剛。走りの量も足りなかっただろうが、いかに走れば効果的なのか、質という部分での戸惑いもあったかもしれない。選手個々が攻撃のイメージをどれくらい共有できているのか?それが走りの質に影響を及ぼしているように思う。

 約8ヶ月ぶりに代表に合流した中村俊輔は、メンバーとの連携を向上させるために試合前から、多くの選手と話し合ったという。特に会話を重ねたのは、松井、山瀬、寺田、長友だった。アジアカップで数多くの時間をすごした選手とはすでにパイプの下地ができていると感じているようだ。

 「選手間のパイプをもっともっと太くしていく必要がある。そういう意味では、初めて一緒にやる選手、あまりオシム監督時代にやっていなかった選手とは、よく話をした。時間もないし、話すことで自分のプレーを知ってもらわなくちゃいけないから。長友と僕とではポジションは離れているけれど、離れているからこそ、ふたりのパイプがうまく作れれば、サイドチェンジなど効果的なプレーになる」