<J2:仙台2-2湘南>◇5月31日◇第17節最終日◇ユアテックスタジアム仙台

 J2仙台が痛恨のドロー劇を演じてしまった。FW田中康平(22)の移籍初ゴールなどで前半10分までに2-0。だが後半9分に追い付かれ、さらに湘南選手の相次ぐ退場で同27分からは11対9の数的優位な状況にも、単調な攻撃で追加点を奪えずじまい。試合後には今季初めて、サポーターからブーイングが浴びせられた。一方、山形も2点先取後に追い付かれたが、その後の3連続得点で横浜FCに快勝した。チーム最多タイの1試合5得点のゴールラッシュで、今季初の3連勝。ついに仙台を抜き4位に浮上した。

 焦るばかりで、時間だけが過ぎてゆく。2-2の後半27分、湘南に2人目の退場者が出た。決勝点を期待する熱気がユアスタに充満する。残り時間18分。相手を崩す時間は、たっぷりある。だが、いたずらにパワープレーを繰り返すだけ。MF佐藤がクロスを入れてははじかれ、MF関口がドリブルで仕掛けては止められる。

 「無策さ」は明白だ。ペナルティーエリアの中に8人が入りっぱなしの湘南。その相手を、エリア外に引き出すアイデアがまったくない。サイドチェンジや長短、緩急を使い分けるパスもなく、わざわざ1対1で強引に勝負したり…。主将のMF梁は「個人の仕掛けも大事だけど、もう少し数的優位な状況をつくらないと…。自滅です」と、失った勝ち点の重みを受け止めた。

 不振のFW中島に代えて先発した田中が開始早々に先制点。前半10分にはDF木谷に3シーズンぶりの得点が生まれ、これ以上ない展開だった。だがここから得点後に落ち着けない「悪癖」が姿を出す。前半19分にPKで1点を失い、後半9分には守備のばたつきで同点に。中島、中原、佐藤を投入したが3点目が奪えず、指揮官は「うまくいきませんでした」と白旗。危険と言われる「2―0のわな」にまんまとはまった。

 個の力で打開できる選手がいない。ゴール前を固める相手を、切り崩す策もない。状況を冷静に判断してプレーするわけでもない。痛感したはずの第1クールの「勝ち点の取りこぼし」から何も学んでない。勢いだけのチームなら「昇格」の2文字は遠のくばかりだ。【山崎安昭】