<J2:山形3-0仙台>◇第20節◇15日◇NDスタ

 山形が659日ぶりに、因縁対決を制した。仙台に3-0で快勝し、06年8月以来、7試合ぶりの、みちのくダービー白星。前回の対戦で2点差逆転負けした屈辱を、完勝で晴らした。3試合連続3-0勝利という安定した戦いぶりで、チームタイ記録となる7年ぶりの6連勝もマークした。一方の仙台は、今季2度目の3失点で完敗。ダービー通算成績は、山形の5勝12敗13分けとなった。

 サポーターの興奮をよそに、ダービーに勝つ快感を静かにかみしめた。終了のホイッスルが鳴ると山形イレブンは、互いに歩み寄ってハイタッチをかわす。DF石川は、満員のサポーターに向けて拍手をした。約1年10カ月ぶりの仙台戦白星。しかも複数得点差を付けての快勝は、節目のダービー30戦目で初めて。それでも派手な喜び方をしないところに、同じ東北のチームとしてのプライドを漂わせた。

 強さは本物だ。前半18分にMF宮沢が先制点を挙げ前半を1-0で折り返す。しかし、安心はできなかった。「前回は2-3で逆転されたから、1点じゃ分からない」。攻勢を緩めず、後半21分に左CKからDF石井が追加点。ロスタイムにはFW長谷川がダメ押しし、シュート16本の“猛打ショー”を締めた。「お客さんが多くて気持ち良かった。いつもよりパフォーマンスを派手にしました」と笑顔を見せた。

 ターニングポイントは、5月3日の首位広島戦だった。小林監督が目指す堅守を貫きスコアこそ0-1だったが、シュート数は2本対13本。攻めの必要性を痛感した。「敵陣でプレスをかけて、ボールを奪って攻める。守備は安定してきたから、できると思った」。ボランチから前の選手が積極的に飛び出す組織プレーを確立し、最近8試合24得点でMFが半分の12得点。FWに頼らない攻撃スタイルが完成した。

 最終節までJ1昇格を争った01年以来、クラブ史上2度目の6連勝。それでもベテラン指揮官は冷静だった。「チームが若いから、本物じゃない。シーズンを通して答えが出る」。今後は甲府、湘南、広島と強豪との戦いが待つ。油断はできないが、この日の圧勝で勢いを増したことは間違いない。MF石川はヒーローインタビューで「広島戦まで勝ち続けて、首位を倒す気持ちで頑張ります」と叫び大声援を浴びた。2位から首位へ-。自動昇格圏の中で、チームはさらに上を目指す。【柴田寛人】