<J2:福岡2-1徳島>◇第26節◇13日◇レベスタ

 「博多の男」の涙が、レベルファイブスタジアムを熱くした。福岡の篠田善之監督(37)が、就任3日目の初采配で初勝利を飾った。ホーム徳島戦は開始10分で1点のビハインドを背負う、難しい展開。前半終了間際、PKで追いつくと、新監督は大胆に交代カードを切った。途中出場の3人がつないで勝ち越しゴールを奪い、初陣を飾ると、福岡初の生え抜き指揮官は目を潤ませながら、全員と抱き合って喜んだ。

 選手に一番近いところから見抜いた適材適所の采配が、初勝利に生かされた。後半39分、自陣からドリブルで持ち込んだのは、5分前に投入されたMF中払大介(31)。開幕スタメンもベンチ外が続いた5月にオーバーワーク症候群になり、当時コーチだった篠田監督が付きっきりで、復帰後の練習を行った。「シノさんからは『中盤で攻撃を工夫する持ち味を失うな』と励まされた。自分のドリブルがゴールと勝利につながって、うれしい」と、笑顔を見せた。中払のパスを受けたのは、後半20分から出場のFW田中佑昌(22)。前監督時代は右サイド起用が多かったが、この日は後半開始から投入されたFW大久保哲哉(28)と2トップを組んだ。田中は「自分としてはFWの方が良い」と、本職に戻った喜びを快足に乗せ、相手の最終ラインの裏に抜け出して右クロスを上げた。ゴール左で頭を合わせた大久保は、ヒーローインタビュー中に「シノさんを泣かせちゃいました!」と、指揮官を迎えてマイクを渡した。

 「今日の1勝は、僕ら選手にとっては、先を見たら大きな1勝です。サポーターの皆さん、心配させて申し訳ありませんでした!」。汗と涙でぬれた顔で、感激のあまり「僕ら選手」と言ってしまった監督に、この日一番の拍手が送られた。内容的には相手の精度の悪さに助けられた勝利だが「何かが変わったところを見せたい」という第一の目標を達成し、8位に順位を上げた。【佐藤千晶】